2010/05/21

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

大学の講義で専ら参考書が提示される場合は、その講義の担当する教員が著者である本が多い。
自分で書いた本ならば、書いてあることの全てが自分の言葉なので講義を進めやすいとは思うが、その文章を書いたのは専門的な知識はあっても文章力が乏しい人であるので、その専門書が読みにくいことも多い。
現在、大学の講義にて「コーポレートガバナンス論」なるものを受講していて、そこで使っている専門書は言わずもがなその講師が書いたものである。
その参考書は、ドラッカーの諸論を軸に講師が自分なりに解釈していく構成なのだが、読みにくいったらない。
自分の読解力を棚に上げるようだが、わざわざ値段が高い(需要がないので大学で使うような本は高い)本を買ってるのは、あなたに印税を渡すわけではない、とこういう参考書に出会うといつも思いますね。
まあ、学術書なので仕方のないことなのかもしれないが。


上に書いた不満を思っていたら、偶然にもタイムリーにある本を知り合いが勧めていた。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本である。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
岩崎 夏海

ダイヤモンド社 2009-12-04
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敏腕マネージャーと野球部の仲間たちが甲子園を目指して奮闘する青春小説。
高校野球の女子マネージャーのみなみちゃんは、マネージャーの仕事のために、ドラッカーの『マネジメント』を間違って買ってしまいます。
はじめは難しくて後悔するのですが、しだいに野球部のマネジメントにも生かせることに気付きます。
これまでのドラッカー読者だけでなく、高校生や大学生、そして若手ビジネスパーソンなど多くの人に読んでほしい一冊。


ということで、上にある参考書のとっかかりになるかなと思い読んでみた。
確かに経営、マネジメントという分野に対してのとっかかりになりはしたが、自分の求めていたのとは違うベクトルで残念であった(事前に中身を確認しなかった自分が悪いのだが)。

でもせっかくだから感想を。
作中にドラッカーの言葉を引用して、自分の置かれている環境とリンクさせ、その言葉の意味を考え適応させていくのだが、そんなにトントン拍子に上手くいくのか?という疑問は残る。
人間なのだから理論上は上手くいくと思っても、そうならないことは多い。ドラッカーの引用文で「~~こうあるべきだ」と述べられている部分を順守するのは、エゴになってしまい不和を起こすかもしれない。
仮想の読み物なのだから、主人公(女子マネージャー)には見方がいて、支えてくれる人が周囲に大勢存在し、挫折なく成功していくが、現実にはその成功を妬む人もいたり、その行動を阻害する人も出てくると思われる(企業の場合は、競合他社など)。
こんな障害が起きたら、こう対処するば絶対に大丈夫だなんてマニュアルは存在しないが、話の展開的に捻くれた敵(例外な存在)を登場させるともっと面白かったかもしれないと思う。

話が耽々とスムーズに進行してくので読みやすく、学術書に多い概論(机上の空論)的なものに具体例を出して(本書の場合野球部との関わり)、想像しやすくしているので、普段活字を読まない人でも読みやすくなっている。といっても、具体例を提示することで読者に考えることを放棄させてるとも読めるが。

惜しむらくは、文章の稚拙さが目立って小説という点でみるとお粗末な文になっていると思われることだ。
それと、1680円という値段も少し高すぎるのではないか?
この手の値段のハードカバーよりもいい意味で読みやすく(ラノベみたいな)気軽に手が出せるが、値段とボリュームで比べてしまうと割高と思える。
社会人や大学生あたりならポンっと出せる金額かもしれないが、もっと値段を低く設定し高校生や中学生にも読んでもらえれば、今よりも話題になってたのではないだろうか。