2012/07/27

下ネタという概念が存在しない退屈な世界

タイトルと表紙に釣られ、あらすじも何も見ずに買ってみた。


【下ネタという概念が存在しない退屈な世界/赤城 大空・霜月 えいと】

バナナは下ネタに入りますか?

「お●んぽおおおおおおおおおぉ!!」少女は叫びながら、駅の構内を走り出した。
その瞬間、僕はすっころんだ。16年前の「公序良俗健全育成法」成立により、日本から性的な言葉が喪われた時代。
憧れの先輩・アンナが生徒会長を務める国内有数の風紀優良校に入学した奥間狸吉は、《雪原の青》と名乗るペロリストに弱みを握られ、下ネタテロ組織「SOX」のメンバーとなってしまった……! そこはプリズン? それとも、ハーレム?
第6回小学館ライトノベル大賞・優秀賞を受賞したノンストップハイテンションYトークコメディ! よろしこしこ!


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赤城 大空 霜月 えいと

小学館 2012-07-18
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個人的には、下ネタが存在しないという奇抜で壮大な世界観は面白いものの、高校生にもなってセックスのやり方を知らないだの、オナニーがわからない、恋愛がわからないというのは、低俗な情報から一切遮断されて育った清廉潔白な若年だとしてもありえるのかと粗を考えてしまう。


個人認証のデバイスで卑猥な言動を発することを監視され、違反者は直ちに投獄。
このデバイス、口から卑猥な言葉(ちんことかまんことか)が発せられたらアウトという現代の治安維持法、言論弾圧、言葉狩り。ようするに、セックスのやり方を伝聞することができない世界。
手記による卑猥な言葉、イラストを描くのもアウトらしく、口で説明できないからといって、紙に書いて教えるということもできない。この世界ではセックスのことをドッキングと隠語で語られていた。
紙に書くのがNGだとしても、タイプピングはどうなのか、アスキーアートを作るのはどうなのか、思いつかないけど、他にも表現する形はあると思う。本作では足で作画して春画を描くという抜け道が示されていたけど、もっと他の方法があるんじゃないの的な。
ただ、フィクションの世界に一般的な現代感覚を持ってくるのもナンセンスだと思うんだけど、これを制定する前に一悶着が必ずあるはずで、こんな馬鹿げた法律(公序良俗健全育成法)は万が一にも制定されないはず。
まず人権的な問題、言論の自由であったり、行動の自由であったり、個人の活動は制限することはできない。これ、憲法で規程されているから、憲法改正しない限り無理。まあ、この作中法律が憲法に引っかかっているのかどうかは知らんけど。
それと、性関連産業の人間からの反発。AV、風俗関係はもとより、青少年保護育成条例の前例と同じように出版社等の表現する業界からの反発。
この世界観、突き詰めれば青少年保護育成条例がより強固により厳格に改正された未来ということなんだろうけど、そこに至るまでのハードルとその世界を構築する環境の維持が難しいんじゃないかと思う点で、奇抜さはあっても、現実味がない。
魔法が存在するライトノベルに現実味もへったくれもないんだけど、こういう似て非なる、なきにしもあらず的な世界観だと奇抜な設定が逆に設定厨(自分みたいな)に受け入れられ難いのかもしれない。
まあ、そういうのを気にしない人ならノリで楽しめる一作。
眼鏡スキーな自分としては、華城綾女(表紙の人)の本能を晒さない日常的な三つ編み、眼鏡の姿が仮なことに納得しない。

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